中井敦子展「面影」
Atsuko Nakai exhibition
2015年4月1日~18日(正午~午後7時、最終日午後5時まで、日・月曜休)

よくあるエピソード。ほかの人にカメラで自分を撮ってもらった女性がその写真を見て、「これは私ではない」と言いました。被写体はその女性なので、「私ではない」はずがないのですが、彼女は認めませんでした。もしかしたら彼女の言葉の意味は「これは、他者にそう見えてほしいと望んでいるイメージとは違う」ということだったのかもしれません(上の写真は本人納得ずくです)。 

スマホで自撮りした写真をSNSに簡単にアップできる時代、レストランで撮った写真であれ旅行中に撮った写真であれ、ポートレートが演出の産物であることは暗黙の了解事項です。大切なのは、画面の中の人がつくり出している気分。楽しそうであったり華やかであったり、あるいは気難しそうであったり。 

油彩画家の中井敦子は自画像をテーマに制作を続けてきましたが、今回の個展では、自身に似ていない自画像も描きました。さらには、自画像とは言えない、誰かの肖像画も。取り入れた手段はデフォルメ(変形)と比喩。どうせ似ているか似ていないかは問題でないのだとすれば、本人とわからないほど形を崩し、非実体的なイメージをつくり出す肖像画の存在感そのものに焦点を当てました。 

人物も風景も絵づくりの素材の一部。それらを組み合わせて、そこにはいない人物が現れたかのように感じさせることはできないか。そうした意図から生まれた新作十数点を出品します(写真は京都市内のアトリエで=撮影・山田哲也)。 

中井敦子(なかい・あつこ) 1979年大阪生まれ、2005年京都市立芸術大美術学部油画専攻卒。11年、12年ギャラリーモーニング(京都市)で個展、12年橘画廊(大阪市)で個展「Spring on Paper」、13年橘画廊で個展「つかのあひだ」。14年ACAS HONG KONGに出展。