月の光浴びた生き物の形

Hiroko Hasegawa Tachibana Gallery
長谷川浩子展
2012年4月2日~14日(日曜休)

「肉体が自分だとは思っていない」と、彫刻家の長谷川浩子は言います。肉体が滅んでも自分は死なないという意味なのか、ほかに深い意味があるのか、真意はわかりませんが、三次元でとらえられる世界の外にも目が向いていることは確かなようです。「オオゾラニキス」「ヒトツニナル」「ホシノヒト」といった作品のタイトルにも、日常を超えたものへの関心がうかがえます。

木彫を始めて20年。今は、ヒノキ、マツ、サクラなどを素材に、翼を思わせる流線形の作品や人の顔をかたどった作品を制作しています。紙やすりをかけ胡粉(白色顔料)を塗った表面はなめらか。シンプルなフォルムが優しさを感じさせます。それでいて、ただエレガントなだけの作品ではありません。物質文明とともに人間はもう限界に来ているのではないか、人間の次の存在は何なのか。そう考えている長谷川が生み出す祈りにも似た造形。こうした作品を前にして、創造するとはどういうことなのか、問い続けざるを得ません。

ここに掲げた写真の作品は「エネルギーの女神」をイメージしています。「宇宙のエネルギーをシュッと集めてくる存在」がなんとなく思い浮かんだそうですが、「原子力発電の対極」というイメージだけははっきりと持っていました。「これ」があれば化石燃料も原発もいらないというのです。「これが現れてくると世の中変わるような気がして……」。親しみを持って「これ」と呼ぶ彼女は真顔でした。

そんな彼女のインスピレーションの源が夜空に浮かぶ月です。満ち欠けを繰り返し、生命をコントロールする月。作品をつくるときは、その光を浴びた、すべての生き物に共通するエネルギーの形を意識しています。人間に似せた形をつくることや、動物に似せた形をつくることなら、そう難しくはないかもしれません。しかし「あらゆる生き物に地下水脈のようにつながっている形」を探るところに長谷川の挑戦があります。福島県いわき市から奈良県明日香村に拠点を移して約10カ月。関西では初の個展です。木彫10点とパステル画1点を出品します。写真は「オリタツ」(部分、2012年、サクラ、マツ)
(月~金曜午前11時~午後7時、土曜正午~午後5時)

長谷川浩子(はせがわ・ひろこ)
1961年 新潟県新発田市生まれ
1986年 東京芸術大卒
1987年 田村画廊(東京)で初個展
1988年 東京芸術大大学院彫刻専攻修了
福島県いわき市を拠点に活動し、ギャラリーいわき泉ケ丘(いわき市)、ギャルリー志門(東京)などで個展多数
2011年 東日本大震災で被災し、いわき市から奈良県明日香村に移住
グループ展「いま。つくりたいもの、伝えたいこと。」 (いわき市立美術館)