寺村サチコ個展「今夜は女の子」

Sachiko Teramura Tachibana Gallery 寺村サチコ 橘画廊
Sachiko Teramura Exhibition
2012年9月26日~10月6日(日曜休)

鮮やかな色、意味ありげな曲線。繊維造形作家、寺村サチコがつくる立体は、官能の象徴として咲き誇る花のようです(写真は過去の作品の部分、シルクオーガンジー、絞り染め・型染め)。リアルな花ではなく、植物でさえないのかもしれませんが、甘い香りを漂わせそうな見かけは動物を誘う花の性質を感じさせます。

兵庫県出身の寺村が東京の大学に入ったとき、きらびやかに着飾った女の子たちが花かクラゲに見えたそうです。昆虫を誘い、蜜を吸わせる代わりに花粉を運ばせる花か、海の中をふわふわと漂い魚を捕食するクラゲか。外見は魅力的だけれど腹黒い。そんな、少し意地悪な見方から、上品なシルクオーガンジーを素材に立体をつくってきました。

もちろん野生の花は人の目を楽しませるために咲いているわけではありません。それは植物が子孫を残すために必要な手段です。人間も植物と同じ生き物であるとすれば、意地悪な見方をしたというよりも、善も悪もない自然界の秩序を示しただけと言ったほうがよいのかもしれません。

植物が昆虫を誘う戦略はさまざまです。チョウでもハエでも選り好みをせずに招き入れる花もあれば、特定の昆虫にだけ蜜を吸わせる花もあります。それぞれが生存に有利なように進化し、自らの形を変えてきました。植物の多様化にならい、彼女も次々と新しい造形美を生み出しています。
(月~金曜正午~午後7時、土曜正午~午後5時)

寺村サチコ(てらむら・さちこ) 1986年兵庫県生まれ。2010年多摩美術大卒、神々への捧げものアートコンペ優秀賞。11年赤穂市立図書館ギャラリーで個展、前橋アートコンペライブ・グランプリ、12年多摩美術大大学院修了。