浅野綾花展 ちょっとかなしい

Ayaka Asano Tachibana Gallery
Ayaka Asano exhibition  My Little Sorrows
2013年2月11日~23日(日曜休)

画面の「余白」に書かれているのは言葉です。「わたしのこと知らないのに/愛してるなんて言うから/君がうそつきに見えたの」。こんなふうに、女性である「わたし」が男性の「君」にぶつぶつつぶやいたり、「君」と「わたし」のやりとりをさめた目で眺めたりしている様子が記されています。銅版画を制作している浅野綾花にとって、今回、画面に文章を書くことは一つの冒険でした。

中学生のころから日記代わりに書きためていたドローイングと文章。ドローイングは早くから作品に取り入れていましたが、「言葉は直接的過ぎるから」と、使うのを控えていました。本人によると、もともと、作品を人に見られるのがつらいと感じるタイプ。絵だけでも恥ずかしいのに、ましてや文章なんて、という気持ちだったそうです。しかし展覧会を重ねるにつれ、自分のことを知ってほしい、存在を認められたいという気持ちが広がり、ためていた文章の一部を解き放ちました。

ビル、住宅、立体駐車場、自画像に花。版で刷った絵の部分には、思春期までを過ごした静岡や今住んでいる大阪、アトリエのある西宮などで見たものが、懐かしさを醸しながらまるで風景のごった煮のように一体となっています。モチーフはきわめて個人的な経験に関連していますが、表現の内容は事柄や物語ではなく一瞬の感情といえます。

あえて言葉にすれば「振り切れなかった小さな悲しみ」をいとおしむ気持ち。それを、いかにしてありきたりでない方法で伝えるかに彼女の意識が向けられています。写真は「愛してるのじゅばくれい」(2013年、銅版画、色鉛筆、30.7×46センチ)。
(月~金曜正午~午後7時、土曜正午~午後5時)

浅野綾花(あさの・あやか) 1985年静岡県生まれ、2008年大阪芸術大芸術学部卒。11年Gemma(焼津市)、番画廊(大阪市)で個展。12年Gemma(焼津市)、2kw gallery(大阪市)、番画廊(同)などで個展。