竹島善一写真展「会津 昭和五十年代の記憶」

竹島善一 下郷町大内 1970 橘画廊
Yoshikazu Takeshima exhibition
前期2013年3月4日~9日、後期3月11日~23日(日曜休)

福島県の奥会津を40年以上モノクロームで撮り続けている写真家がいます。東京在住の竹島善一。ライカを手に農村に入っていったのは木村伊兵衛(1901~74年)と同じですが、一つの地域に注ぎ込んだエネルギーが尋常ではありません。木村が秋田を訪れたのは52年から71年にかけての21回。これに対し、竹島の奥会津での撮影は1000回以上にのぼります。

生まれも育ちも東京の竹島が奥会津に初めて触れたのは1970年真冬の朝。弘前への撮影行の帰路、夜行列車の乗り換えで偶然に乗ってしまった列車の窓から会津盆地の雪景色を眺めるという形での出会いでした。本業はうなぎ屋ですが、以来、日曜の夜に店を閉めた後、夜行列車に乗って奥会津に入り、定休日である月曜の夕方まで撮影するという生活を続けました。若いころはそれがほぼ毎週。年をとってからはさすがに頻度が落ちたものの、今も自ら車を運転し、奥会津へ出かけていきます。

撮影しているのは茅葺屋根の民家、軒先の風景、話好きのおばあさんに、外で遊ぶ子供たち……。竹島は奇をてらわず、「被写体に語らせる」という姿勢を貫き、対象の自然な姿にさりげなくカメラを向けてきました。30年、40年たってみれば、そうして撮られた数多くの写真がある時代への鎮魂歌として浮かび上がってきます。

もともと「生きているうちに人に見せるつもりはなかった」そうですが、10年ほど前から作品の公開を求める声が相次ぎ、展示の機会が生まれました。今回の展覧会では、茅葺民家の生活がかろうじて残っていた昭和50年代に絞り、前期と後期に分け合計約20点を展示します。すべて本人が現像し、プリントしたモノクロ写真です。上の写真は1970年1月、福島県下郷町大内で。竹島が初めての奥会津で撮った一枚です。
(月~金曜正午~午後7時、土曜正午~午後5時、3月20日も営業)

竹島善一(たけしま・よしかず) 1935年東京生まれ。蒲焼き店経営のかたわら、奥会津の人や風物を主な専門として写真を撮り続ける。アフガニスタン、中国などでも撮影。2012年、アフガニスタンを主題にギャラリー412(東京・青山)で個展。著書に『会津農の風景』『谿声山色』『蘇る記憶Ⅰ』『蘇る記憶Ⅱ』など。
「竹島善一の話」(撮影の経緯など)