「忘れましたわ」

Shozo Shimamoto Tachibana Gallery 嶋本昭三 橘画廊
嶋本昭三のカンバスの小品群(写真)の中には、一見、絵の具の塊のようにも見えるものがついている作品があります。しばしば、ご覧いただいた方から「何がついているのですか」と聞かれるのですが、それらはガラスの破片です。絵の具の入ったガラスの瓶をカンバスに投げつけて絵を描いているため、割れた瓶の破片がカンバスに付着した……というわけです。逆に、よく見ると穴があいている作品もあります。

イタリアの美術家、ルチオ・フォンタナは1949年ごろから、紙やカンバスに穴をあけたり、カンバスを切り裂いたりし、「絵画の平面性を打ち破った」と評されていますが、嶋本も同じぐらい古くから同様のことをしていたという説があります。そんな嶋本ですから、ガラスの瓶を投げながら「破片がついたら面白いな」くらいのことを考えていたとしても不思議ではありません。

それにしてもガラス片のつき方がきれいです。「本当に、こんな絶妙のポイントに偶然、破片がつくのでしょうか」と疑問を投げかける方もいらっしゃいます。作家本人にきいてみるしかありませんが、制作方法を作家にたずねても「忘れましたわ」という答えが返ってくるだけでした。