グループ展「膜をほどこす」 

Layers of Reflection Tachibana Gallery
奈良田晃治・河合真里・福田遼子
Group exhibition Layers of Reflection  Koji Narada, Mari Kawai, Ryoko Fukuta
2014年4月8日~26日(正午~午後7時、最終日午後5時まで、日・月曜休)

絵画の魅力をつくる要素の一つに、絵の具の層の重なりやイメージの重なりがあります。そうしたレイヤー(層)があってこその手触りや身体性、あいまいさ。3人の若手画家の作品の中から、具象、抽象を問わず、それ自体の魅力によって視線を釘づけにする油彩画を紹介します。

奈良田晃治は主に旅先の風景をモチーフに、地と図の関係が入り組んだコンポジションとしての風景画を制作しています。彼いわく、それらは思考の手掛かりをつくる「平面的なオブジェ」。風景の再現は意図せず、手前の木の部分をシルエットで抜く一方、「地」の方を綿密に描くなど、地と図の関係を揺るがしています。彼は空間の重なりや地と図の関係性を追うことをきっかけにして鑑賞者を作者の身体性へ引き寄せたいと考えています。

一方、河合真里は主役をはっきりと表し、ゆっくりとなでるように画面を作っています。しかし鑑賞者が既知のものを見ようとしても、そこに現実のものの姿はありません。彼女の狙いも何かを再現することではなく、いくつもの層を重ねることによって微妙な色合いを生み出すことにあります。「絵の具の層が厚くなるほど、奥底にひそむ光が見えるような、本質的なものにたどり着けるような感覚がある」と、河合は言います。

Ryoko Fukuta Tachibana Gallery
福田遼子が表しているのは、生まれる前に母親の胎内で感じていた安心できる空間。「形」を越えて色が響き合う抽象画でありながら、部分的に絵の具の層を重ねることによって生物の器官のようなかたまりを感じさせます。制作時には「ゆったりした時間の流れや、ゆるやかで親しみのある音」も福田の意識にあるようです。

写真は、左上=奈良田晃治「鶏頭場の池」(アクリル、カンバス、37.9×45.5センチ)、右上=河合真里「斜塔」(油彩、カンバス、72.7×53センチ)、下=福田遼子「やさしいめざめ」(油彩、カンバス、13.9×17.9センチ)。奈良田の「鶏頭場の池」は参考画像。

奈良田晃治(ならだ・こうじ) 1982年大阪生まれ、2006年大阪芸術大芸術学部卒。09年以降、Gallery Den(大阪市)、2kw Gallery(同)で個展。 

河合真里(かわい・まり) 1987年兵庫県生まれ、2012年武蔵野美術大大学院造形研究科美術専攻修了。13年に個展「トーキョーワンダーウォール都庁2012 ある光景」(東京都庁第一本庁舎)、同じく「TWS-Emerging210 層の記憶」(トーキョーワンダーサイト本郷/東京)。 

福田遼子(ふくた・りょうこ) 1987年徳島県生まれ、2011年鳴門教育大大学院美術コース修了。11年Gallery銀座フォレスト(東京)、GALLERY SUZUKI(京都市)で個展。12年橘画廊、Gallery銀座フォレストで個展。同年国展新人賞受賞。13年橘画廊で「福田遼子展」