世良京子ステートメント

Kyoko Sera Tachibana Gallery
世良京子展 天体の音楽

Kyoko Sera exhibition
Songs of Spheres
2014年6月3日~28日(日・月曜休、正午~午後7時、28日は午後5時まで)

2000年代を通してニューヨークで活動した美術家、世良京子。ニューヨークでは、記号的なイメージのレイヤーが印象的な絵画5点を十字型に展示する作品「クロスモデル」に取り組んでいましたが、2012年に帰国後、それらを解体し再構成するインスタレーションに向かいました。今回の橘画廊での個展でも「クロスモデル」をベースにした新作インスタレーションを発表します。写真は、北九州市にあるアートスペース、Operation Tableでの世良京子「トンネルのむこうに」の展示風景(撮影=榊旻史)。以下は世良のステートメント。

「天体の音楽」のこと
今回、橘画廊で発表する作品のシリーズは、昨年11月、Operation Table(北九州市)から始まりました。始まったというよりも、これしかなかった、作品がなかった……なんていうのが正直なところです。 

2012年の6月にNYから福岡に居を移して1年以上も経つのに、とにかくのんびりしたいという気持ちばかりが働いていまして、その上に体の不調、各種の病気にもぞくぞくと見舞われますし、作り出したアトリエもなかなか完成しません。そういう状態でしたので、持っている作品を再構成してはどうだろうと。もうそれしかない、それしか今はできない……という感じでした。その(既存の)作品は絵画5枚を1組として十字に展示するクロスモデルという作品なのです。 

そんな情けない状況の中で始まった仕事ですが、結果、私としては驚きの、これからもずっと続けていこうと思えるくらいの作品として仕上がりました。作品の出方、創造というのは本当に面白いものだと改めて思います。そのような「おもいがけない」ことが起こるとき、作家という仕事にかかわったことへの幸福を感じます。「おもいがけない」なにかが、その空間を、場を変更するのを体験するとき、私は驚きながらもシーンと静まった心と、そして満ち足りて大きく広がる自己に遭遇します。 

そして、その「おもいがけない」ことの起こった作品が、その作品を見ていただく方々に同じような体験を少しでも促すことができるならと、こころから望みます。前回の発表では、Operation Tableの真武真喜子さんやお友達と私のNYでのライフの話などしながら「トンネルのむこうに」というタイトルをみんなで決めました。今回は千葉さんから「天体の音楽」という名をつけていただきました。高知県美の川浪さんが書いてくれたように、千葉さんもあの空間のなかでなにか音を聞かれたのだと思います。私ももちろん聞いています。 

創造というのは本当に不思議ですね。そして私たちはそれに伴ういろいろな知覚の経験をします。そのような不思議空間を乗り物とし作家として制作を続けていけたらと思っています。(2014年4月23日)
Operation Tableウェブサイトの川浪千鶴さんのテキスト共に
http://operation-table.com/sera.html

世良京子(せら・きょうこ)
1957年 福岡県生まれ
1994年 第1回VOCA賞受賞
       「現代美術の展望—’94FUKUOKA 七つの対話」(福岡県立美術館)
1999年 「北九州ビエンナーレ 繰り返しと連続性の美学」(北九州市美術館)
2000年 文化庁新進芸術家海外派遣制度によりニューヨーク滞在
2001年 資生堂椿会展/SHISEIDO GALLERY (2005年まで5回)
      渡米、ニューヨークを拠点に活動
2007年 Making A Home- Japanese Contemporary Artist in New York(Japan Society, New York)
2008年 Kaleidoscope: Abstraction in 10 ways(The Harold B. Lemmerman Gallery, New Jersey City University, New York)
2012年 帰国