伊東敏光展「対馬三景」

Toshimitsu Ito 'Flightscape—Dream of the Ruined Boats' Tachibana Gallery 橘画廊
Toshimitsu Ito exhibition Three landscapes of Tsushima
2015年6月6日~27日(正午~午後7時、最終日午後5時まで、日・月曜休)

絵画と違ってフレームがなく空間を切り取るのに向いていない彫刻で、風景をいかにして表現するか。彫刻家の伊東敏光が近年制作している「風景彫刻」は未開拓ともいえる領域の中から新しい方法論を生み出すスリリングな試みです。今回は3通りの方法で長崎県の対馬の風景を表します。 

伊東は2011年から地域型アートプロジェクトの対馬アートファンタジアに参加し、頻繁に対馬を訪れてきました。対馬は九州と朝鮮半島の間の対馬海峡に浮かび、国境の島と呼ばれています。南北に細長い主島をはじめ全体に山地が多く、海岸部ではごつごつとした岩がそそり立つ荒々しい風景が特徴です。 

メーンの作品の一つ「飛行景―廃船の夢―」(写真、2014年、木、390×400×140センチ)は、かつて対馬で活躍した木造の漁船を素材に制作しました。飛行機をフレーム代わりにして、その胴体部分や翼の部分に、地形の特徴的な要素を盛り込んでいます。その中には、古くから霊山として崇められてきた白嶽(しらたけ)などもみられます。

床置き型の「対風景」(11年、木、頁岩、180×70×45センチ)では、向かい合う2人の人物のイメージに重なるようにして対馬の地形をパノラマ風に表現。新作の壁掛け型アッサンブラージュでは、空から見下ろしたときの島の形を大づかみにしながら主観的な大小の判断で山や海岸を描きます。

伊東敏光(いとう・としみつ)
1959年 千葉県生まれ
  85年 東京芸術大美術学部彫刻科卒
  87年 東京芸術大大学院美術研究科修了
2006~07年 米ペンシルバニア大大学院で在外研修
現在、広島市立大芸術学部教授

<近年の主な展覧会>
2009年 「伊東敏光展-Liquidscape-」(泉美術館/広島)
  13年 伊東敏光展(橘画廊/大阪)
  14年 グループ展「拡張する地平」(広州53美術館/中国)

2011年から毎年、対馬アートファンタジアに参加。15年1月には、風景彫刻の「AA60」などを出品したロサンゼルスのアートフェア、LA ART SHOW 2015の展示(橘画廊)がbe-Art magazineのアートフェアレビューでベストブースに選ばれる。