寺村サチコ展(ART OSAKA 2015)

Sachiko Teramura ART OSAKA 2015 Tachibana Gallery
Sachiko Teramura exhibition
2015年7月4、5日、ホテルグランヴィア大阪6215号(ART OSAKA 2015)

進化の袋小路に入り、秘密の花園という特殊な環境で暮らす生き物たち。彼女らが発達させた能力は色と形によるオスの誘引でした。原始的ともいえるこの能力はことのほか強力で、引き込まれたオスたちは食べられてしまいます。繊維造形作家の寺村サチコはシルクオーガンジーを素材に、そんな想像上の生き物を生み出しました。

赤やピンク、紫など鮮やかな色の、曲線を多用した立体は、寺村の言葉を借りるまでもなく「可憐な感じだけど毒があるイメージ」。昆虫を誘い、蜜を吸わせる代わりに花粉を運ばせる花や、海の中を漂って魚を捕食するクラゲなどを意識していますが、人間の女の子の分身ともいえます。

その生き物たちには水中生活の名残がありそうです。水を吸収する根もなければ体を支える茎もない彼女たちは、軽やかなシルクオーガンジーによって表されます。主な技法は絞り染め。一枚の平らな生地を引っ張って括(くく)る、縫って引き寄せる、といった行為を繰り返し、防染しつつ形を記憶させています。

寺村のこうした作品は素材と技法、コンセプトの一致によって誕生しました。ベッドの上に置く、天井から吊るす、アクリルケースに入れる、といったさまざまな展示方法によっても、平らな布をカラフルな立体に変化させるアートの可能性を示します。画像左は「Crawls(あか)」(部分、2015年、染色、シルクオーガンジー、針金、60×40×50センチ)、右は「きれいな魔女」(2014年、染色、シルクオーガンジー、針金、85×85×25センチ)。

寺村サチコ(てらむら・さちこ) 1986年兵庫県生まれ、2012年多摩美術大大学院美術研究科修了。11年前橋アートコンペライブ・グランプリ、12年橘画廊で個展「今夜は女の子」、13年同じく「MY SWEET FLOWERS」。14~15年Hasu no Hana (東京)、GALLARDAGLANTE(京都)、ギャラリーううふ(鶴ヶ島市)などで個展。