夢展 芝田知佳

芝田知佳 消した落書きとエビまたはハコ1995-b 2015 Chika Shibata Tachibana Gallery
Chika Shibata exhibition Dreams
2015年7月7日~25日(正午~午後7時、最終日午後5時まで、12、13、19日休)

シルクスクリーンや染色を手掛けるアーティスト、芝田知佳がゲームや漫画のキャラクター、生き物など自らの無意識の領域にひそむイメージの断片を使い、ポップな平面作品を発表します。夢に出てきた不条理な状況、瞑想しようとして浮かんできた雑念。それらにからむイメージを、マンダラで仏菩薩たちを配置するかのように一つの画面に共存させ、世界観を表現しています。

例えば、阪神大震災があった20年前の記憶をテーマにした「消した落書きとエビまたはハコ1995-b」(画像、2015年、シルクスクリーン、コラージュ、ドローイング、80×80センチ)。箱の展開図のような白地に、ロブスターやエビ、鳥、キャラクターなどが紺一色で落書き風に描かれ、背景の赤い部分には白のグリッドが記されています。上部左右にドローイングで一対のエビフライを配すなど、対称性を感じさせる構図が特徴的です。

芝田は夢で繰り広げられた物語、それをきっかけによみがえった記憶の中からモチーフをつかむという方法をとりました。そして、密教の図像であるマンダラに想を得て、制作に取り組みました。白地の「展開図」の中で一つの世界を構成していますが、限られた要素だけで成り立っているわけではなく、エビもロブスターも漫画のキャラクターたちも、さらに、今は姿を見せていないものまでもが自由に行き交っているようです。

ここでマンダラという言葉を持ち出すことに違和感があるとすれば、作品に描かれているイメージがみな、食べ物や遊び道具など欲望の対象であるからかもしれません。当然、仏教であれば、欲望も、欲望を持つ自己も否定すべきものです。しかし芝田は欲望を肯定し、自己の認識を深めているように見えます。活気あふれる赤や調和を象徴する緑。そうした色の意味合いも「自己肯定」を後押ししています。シルクスクリーン、コラージュによるミクストメディアを中心に十数点を出品。

芝田知佳(しばた・ちか)
1984年兵庫県生まれ。2007年女子美術大芸術学部卒、09年東京芸術大大学院美術研究科修了。13年橘画廊で個展「YY/MM/dd」、14年ART OSAKA 2014で個展「La Mer Hotel Ebi」。11~13年龍野アートプロジェクト(たつの市)、15年新長田アートプロジェクト(神戸市)に参加。