柴田謙司展 Locked in the Ether ver.2.0

Kenji Shibata 08:12:16 Tachibana Gallery 柴田謙司 橘画廊
Kenji Shibata exhibition “Locked in the Ether ver.2.0”
2016年12月7日~24日(正午~午後7時、日・月・火曜休)

色とりどりの花を氷に閉じ込めて撮影し、幻想的で華やかな作品を生み出す写真家の柴田謙司。前回の個展「Locked in the Ether」から丸2年がたった今回の個展では、同じシリーズでありながら、従来はなかった破壊のイメージをすべり込ませ、新しい表現に挑んでいます。それは「矛盾や対立」「時間」といったシリーズのテーマを強化する試みです。

ダリアやトルコギキョウなど、氷の中の花をさまざまな角度から撮影したのは前回と同じ。花が氷に閉じ込められている「ありさま」は時間が止まった永遠の現在の比喩であり、氷が解けていくさまは時間の経過の比喩です。氷の中の花たちは生命力さえ感じさせますが、ひとたび氷が解け始めると、氷の拘束から解き放たれる代わりに、刻々と朽ちていきます。

柴田の作品には、そうした現在の比喩と時間の経過の比喩が同居していて、ドラマチックな緊張感に魅力があります。しかし今回はそれだけではありません。柴田は解け始めた氷をハンマーなどでたたいたり、熱湯をかけたりして、天変地異をもたらすかのように氷の世界に破壊的な力を加えました。氷の表面に走るひび割れはカタストロフを予感させます。

kenji Shibata 04:42:35 Tachibana Gallery 柴田謙司 橘画廊
花たちは天空の裂け目を見て解放への期待に酔いしれるのか、その先に待ち受ける破局を感じて不安にさいなまれるのか。一見、擬人化した花の運命をもてあそんでいるかのようですが、柴田の意識は違う次元へと向いていました。ひび割れた氷であれ、クリアな氷であれ、融解し流れ去れば、すべてがフラット化し、一つのサイクルが終わる。それは次の始まりであるという意識です。上の画像は「08:12:16」(2016年、ラムダプリント、72.1 x 96.4 cm)、下の画像は「04:42:35」(2016年、ラムダプリント、78.8 x 59 cm)。

柴田謙司(しばた・けんじ) 1964年大阪生まれ。93年大阪ビジュアル・コミュニケーション専門学校(現日本写真映像専門学校)卒、97年London College of Printing and Distributive Trades 修了。99年柴田謙司写真事務所を設立。2008年個展「私を知るもの、私を呼ぶもの」(Port Gallery T/大阪)、14年柴田謙司展「Locked in the ether」(橘画廊)。