安藤栄作展 天と地の和解

Eisaku Ando Tachibana Gallery
2011年12月5日~24日(日曜・祝日休)

東日本大震災では、多くの芸術家も被災しました。福島県いわき市に住んでいた彫刻家、安藤栄作もその一人です。激しく揺さぶられた芸術家は何を思うのでしょうか。避難先を転々とした後、奈良県明日香村に移住した安藤は、今回の個展のタイトルを「天と地の和解」としました。

安藤は東京生まれの東京育ち。「このまま人間の作ったシステムの中だけにいて一生を終わるのだろうか」と疑問を抱き、20年ほど前、いわき市の山の中に移り住みました。雲のかたまりが次々と太平洋めがけて飛んでいく空を見上げたり、村全体を赤紫に染める夕日を眺めたりしながら、木を相手に手斧一本で彫刻の制作に打ち込んでいました。15年を経て沿岸部に移住。今年3月11日、大震災発生時は家族とショッピングセンターにいて無事でしたが、津波と火災によって自宅とアトリエ、そして大小数百点の作品はすべて失われました。

新天地の飛鳥は「若いころ好きだった」という土地です。仕事道具は相変わらず手斧一本。斧で丸太をガンガン叩き、手などの形をつくり出します。ノミとこづちではありません。最もシンプルでラジカルな手法から、荒々しいマチエールの彫刻が生まれます。

大震災以前、安藤は「人間は自分だけが生き残ればよいという競争社会に浸っている」と思っていました。しかし3月11日の後、「膨大な破壊と感情の揺さぶりの中で多くの人の生き方が変わり、バラバラだった人々の心がつながり始めた」と感じています。個展のタイトル「天と地の和解」には、「人と人、人と自然、魂と宇宙」といったものが和解を始める壮大なイメージを託したといいます。展覧会には、移住後に制作した木の彫刻ほかドローイングも出品します。写真は「天と地の和解」(ヒノキ、2011年)。

安藤栄作(あんどう・えいさく)
1961年東京生まれ、86年東京芸大彫刻科卒。90年いわき市に移住。97年第5回国際コンテンポラリーアートフェスティバル参加、2001年グループ展「ヴァイブレーション 結び合う知覚」(宇都宮美術館)、05年グループ展「アジアの潜在力 海と島が育んだ美術」(愛知県美術館)、07年東京国際フォーラム個展、09年越後妻有アートトリエンナーレ参加。11年奈良県明日香村に移住。