2012年1月24日~2月3日(日曜休)
石のような硬いものに囲まれた環境は人間に安心と秩序だけでなく誇りをもたらします。コンクリートジャングルと呼ばれる都会に人々が集まってくるのは、誇りを持ちたいという欲望の表れかもしれません。しかし硬いと思っていたものが、さほど硬くなかったら……。欲望の根拠に疑問を抱かざるを得ないでしょう。
造形作家の友田多恵子がつくっているのは紙です。ビルの屋上で、楮(こうぞ)とパルプを溶かした原料を裏打ち布に合わせて溜漉(ためす)きし、自然乾燥させます。原料の段階で墨や鉄さびを混ぜておくため、黒い岩か石のような色合いの紙が出来上がります。湾曲させて立体にすればご覧の通り(写真は海岸通ギャラリーCASOでの展示)。重厚な物体がどっしりと存在感を放ちます。
見た人が「岩みたいやね」と言えば、友田は「そうやね」と答えますが、本人には岩や石をつくっているとう意識はないそうです。ただ「アートには驚きがないとつまらないから」とも。価値観を混乱させる意図はないとしても、作品を目の前にして驚いている人を見るのはそれなりに楽しいようです。
紙の作品たちの声が聞こえてこないでしょうか。「うちら岩みたいやね」「そうやね」
紙の作品によるインスタレーションを予定。
(月~金曜午前11時~午後7時、土曜正午~午後5時)
友田多恵子のこれまでの主な展覧会
<個展>
2000年 Gallery KURANUKI(大阪)
2006、09、10年 海岸通ギャラリーCASO(大阪)
2008年 OST ART GALLERY(ベルリン)
<グループ展>
1990年 国際花と緑の博覧会(大阪)
2006~11年 福井市美術館「素材と表現展」
2011年 清州国際工芸ビエンナーレ(韓国)
Le spectacle de la nature-Japon(仏ブルージュ)